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オリジナル盤・再発盤・リマスター… 何を買っているのか

オリジナル盤・再発盤・リマスター・リミックスは、盤の一生の別々の場面を指す言葉です。さらに日本には高音質CDという軸があります。素材を変えたのか、マスターを変えたのかを見分ける手順を紹介します。

棚に置かれた、古びたレコードジャケットと新しい見開きジャケット、そしてCDケース。

要点

  • 四つの言葉は、盤の一生の別々の場面を指します。音の話はそのうち二つだけです。
  • 高音質CDが変えるのは素材です。仕様はCDと同じで、マスターの話ではありません。
  • XRCDは素材ではなく、アナログテープをデジタル化する工程の技術です。
  • リマスターは日付であって、評価ではありません。平坦になった例もあります。
  • どのマスターかを決めるのは、規格番号とマトリクスだけです。

オリジナル盤、再発盤、リマスター、リミックス。この四つは、しばしば上下のある段階のように使われます。段階ではありません。盤の一生の、別々の場面を指す言葉です。そして音の話をしているのは、そのうち二つだけです。

さらに日本の売り場には、もう一本の軸があります。SHM-CDやBlu-spec CD2といった高音質CDです。こちらは、右の四つとはまったく別のことを指しています。

どの言葉がどの場面の話なのかが分かると、「どれがいちばん良いのか」は問いではなくなります。役に立つ問いはもっと狭いものです。この一枚には何が入っていて、それをどうやって確かめるのか。

オリジナル盤は、時期についての言葉です

「オリジナル盤」が指しているのは製造です。そのアルバムの最初の発売に結び付いた、初期のプレス。音そのものについては何も言っていませんし、売り場での使われ方も厳密ではありません。

やっかいな点が二つあります。ある国での最初の発売が、世界で最初の発売とはかぎりません。ドイツのオリジナルとアメリカのオリジナルが、別のマスターを持つ別の物である場合があります。もう一つは日付です。ジャケットに印刷された著作権表示の年は、録音が登録された年であって、その紙が刷られた年ではありません。 再発盤が古い年をそのまま刷っていることは珍しくありません。

判断材料になるのは、レーベル面のデザイン、規格番号、製造国、そして盤そのものに刻まれた情報です。プレス盤を見分ける手順で、これらの手がかりがどう裏を取り合うのかを説明しています。

歴史的な価値を求めてオリジナルを探すなら、値段を比べる前に「どのオリジナルか」を決めてください。決めないまま入札すると、決めている人を相手に競ることになります。

再発盤は、入手できるかどうかについての言葉です

再発盤とは、そのアルバムがまた買えるようになった、ということです。それ以上の意味はありません。

ジャケット、収録曲、製造、マスタリング。そのすべてが変わっている場合もあれば、どれも変わっていない場合もあります。同じ原盤からの忠実なプレスも、別の音源からの完全な新カットも、どちらも「再発」です。言葉はその二つを区別しません。

ですから再発盤は、聴くための一枚として妥当なことが多く、音の良い物であることもあり、そのどちらでもないこともあります。収録曲とクレジットを見比べ、状態を確かめてください。言葉そのものには重みを置かないことです。古いことも新しいことも、品質の代わりにはなりません。

リマスターは、一つの工程と、日付についての言葉です

ここは言葉を分けておく価値があります。ミックスは、録音された要素どうしの釣り合いを決める作業です。マスタリングは、出来上がったミックスを媒体に合わせて仕上げる作業で、音量、音色の釣り合い、ダイナミクス、曲間などを扱います。リマスターは、今ある音源を使って、この最後の工程をやり直すことです。

つまり「リマスター」が伝えているのは、その盤が後の時点でもう一度マスタリングを通った、ということです。日付です。評価ではありません。そして、悪いほうに向かった例も記録に残っています。

いちばんはっきりしているのは音量です。1980年代のロックの平均的なRMSレベルは −16.8 dBFS あたりでした。1995年、オアシスの (What’s the Story) Morning Glory? は多くの曲で平均 −8 dBFS に達し、当時としては珍しい水準でした。2000年代初頭にはこの傾向が広がりますが、広がった経路が重要です。とりわけ 旧譜のリマスター再発とベスト盤を通じて広がりました。音が良くなるという約束で売られる、まさにその種の盤です。ZZ Topの「Sharp Dressed Man」は、1983年、2000年、2008年の三つの発売で順に音量が上がっています。

大きくすることは無料ではありません。平均音量を上げるということは、静かな音と大きな音の距離を詰めるということで、その距離にこそドラマーのタッチが宿っています。極端な例は技術者のあいだでは古い話で、ボブ・ラドウィッグによる Led Zeppelin II の音量の高いマスターは、カッティングを追い込みすぎてカートリッジが溝から外れる個体が出たため、回収されて圧縮を抑えた版で出し直されました。

だからといってリマスターが悪いわけではありません。Earacheはカタログの多くをFull Dynamic Rangeというシリーズで出し直し、はっきり逆方向に引き戻しています。「リマスター」は工程についての事実であって、結果についての約束ではない、というだけのことです。

リミックスは、釣り合いについての言葉です

リミックスは、マスタリングよりも前の段階に戻ります。声、楽器、エフェクト、空間の関係そのものです。盤の奥にいた楽器を前に出すこともできます。既存のミックスをマスタリングし直すのとは別の行為で、本当に別の盤ができます。

その版に入っているのが元のミックスなのか、新しいミックスなのか、両方なのかを確かめてください。あなたが知っているバージョンであることが、そのアルバムを欲しい理由そのものかもしれません。モノラル、ステレオ、サラウンドも同じ問題の別の形です。これらは包装の違いではなく、釣り合いの違いです。断りなく入れ替えた盤は、音楽を変えています。

高音質CDが変えているのは、素材です

ここからが日本の売り場の話です。SHM-CD、UHQCD、Blu-spec CD2。これらは音質を謳って売られますが、何を変えているのかは、はっきりしています。

SHM-CDはスーパー・ハイ・マテリアルCDの略で、液晶パネル用のポリカーボネート樹脂を使い、盤面の透明度を上げて読み取りエラーを減らす、という考え方です。HQCD/UHQCDはメモリーテック株式会社の開発で、反射膜に特殊合金を使って読み取り精度を上げます。UHQCDは2015年の開発で、現在はこちらが主流です。Blu-spec CDは2008年発売開始、Blu-rayの製造技術をCDに持ち込んだもので、青紫色半導体レーザーでカッティングします。Blu-spec CD2はさらに原盤材料に半導体製造用のシリコンウェハーを採用しています。

これらに共通するのは、仕様はCDと同じだということです。変えているのは盤の素材と製造の精度であって、入っている音のデータではありません。Blu-spec CD2の「原盤」もプレスに使う原盤のことで、音のマスターのことではありません。

どれくらい音が良くなるのかについては、具体的な数値は示されていません。

実際に比べた人がいます

2009年、あるブロガーが『これがSHM-CDだ! 2』という1,000円のサンプラーを買いました。同じ内容を通常CDとSHM-CDの両方で収めた盤です。その人は両方をCUBASE SXで16bit/44.1kHzのWAVにリッピングし、バイナリを比較しました。

結果は「両者が見事に一致」。同一のマスターから作られており、取り出せる音のデータに違いはなかった、という報告です。

公平を期すと、その記事はそこで議論を閉じてはいません。PCの光学ドライブは読み取りエラー訂正を丁寧に行うのに対し、CDプレーヤーは実時間で読むためエラー訂正が不完全になりうる、という反論を本人が挙げ、それは次回検証すると書いています。ですからこれは、その一枚について「同じマスター・同じデータ」だったという確認であって、高音質CD全般の判決ではありません。

それでも、買う側にとっての意味は十分にはっきりしています。素材が変わったことと、音源が変わったことは、別の話です。

XRCDとSACDは、また別の話です

同じ棚に並んでいても、性質が違うものがあります。

XRCDはビクターエンタテインメントの開発で、仕様はCDと同じですが、変えているのは素材ではありません。アナログのマスターテープをデジタル化する工程の質を高める技術です。そのため1980年以前のアナログ録音に効果が大きい、と説明されています。つまり素材ではなく、工程の側の話です。

SACDはそもそも別の規格で、CDの変種ではありません。ハイレゾに対応した次世代の規格です。ハイブリッド盤なら普通のCDプレーヤーでも再生できますが、そのとき鳴っているのはCD層で、音質は普通のCDと同じです。

CDは、ジャケットより多くを語ります

初期のCDには、ブックレットやインレイに三文字の記号が入っています。AAD、ADD、DDD。SPARSコードです。1980年代初頭にSociety of Professional Audio Recording Servicesが提案し、1984年にPolyGramが商業CDで最初に使いました。

三つの位置は、録音・ミックス・マスタリングを表し、それぞれAがアナログ、Dがデジタルです。ここから、多くの人が逆に理解している事実が出てきます。CDでは三文字目は必ずDです。ディスクはそれ以外の方法でマスタリングできないからです。 したがってDDDは成績ではなく、録音とミックスもデジタルだった、というだけの意味です。デジタルテープが普及する1970年代末より前の録音は、CDではほぼすべてAADかADDになります。

来歴としては役に立ち、評価としては役に立ちません。それは提案した側も認めていて、SPARSは1991年に推奨を取り下げています。アナログとデジタルの変換をめぐる混乱が理由で、コードは単純すぎるという声も多くありました。それでもレーベルは印刷を続け、SPARSは1995年に改めて推奨しています。

技術は、上位互換ではなく取引です

「ハーフスピード・マスタリング」は高価格帯の再発によく書かれていて、実体のある技術です。カッティングの回転を半分に落とし——33⅓回転の盤なら16⅔回転——音も半分の速さで送ります。カッターヘッドが苦手とする高い周波数が中域として届き、カッティング針がラッカー盤に溝を刻む時間も倍になります。高域の細かさを良くするために使われるのは、そのためです。

代償もあります。速度を半分にすると全体が1オクターブ下に寄るため、テープレコーダー自体の低域の限界が、低音の帯域まで上がってきます。アビー・ロード・スタジオの技術者も、妥協が生じるのは低域だとしています。低音の多い曲では、標準のカッティングより厚みが減って出ることがあります。得になるかどうかは盤次第です。片方の端を良くするために反対側を差し出す技術であり、その選択を告げるステッカーは、結果についての批評ではありません。

ステッカーは、主張された工程を述べているだけです

海外にも、近年もっとも分かりやすい例があります。

Mobile Fidelity Sound Labは何十年にもわたり「Original Master Recording」、2016年からは「Ultradisc One-Step」という表記で盤を売ってきました。買う側は、マスターテープからすべてアナログで処理された盤だと理解していました。2022年7月、レコード店主のマイク・エスポジートが、デジタルファイルが介在していると主張する動画を公開します。その後、MoFiの技術者自身がチェーンにDSDの工程があることを認めました。同社社長のジム・デイヴィスは、曖昧な表現を用いたこと、誤った理解を放置したことを謝罪しています。集団訴訟が起こされ、MoFiは2023年、不正を否定したまま和解しました。

盤そのものは、それまでと同じだけ良いか悪いかのままです。変わったのは、ステッカーの意味が買う側の理解とは違っていた、という事実のほうです。

高価格帯の再発が詐欺だ、という話ではありません。ジャケットに印刷された文言は主張であり、それを裏づけるのは、その版についての資料だけだということです。

自分をだまさずに二つの版を比べる

両方を聴ける機会があるなら、比較が意味を持つかどうかを決める手順が一つあります。先に音量をそろえてください。

音量競争が成立したのは、耳の癖のためです。他が似ている二つの再生では、初回は音が大きいほうが勝ちやすい。中身がどうであれです。だから音量を上げることに意味があったわけで、それは放送局の担当者に効いたのと同じように、自宅のあなたにも効きます。1987年のCDと2008年のリマスターを、出荷時の音量のまま切り替えて聴くのは、マスタリングの比較ではありません。どちらが大きいかの比較で、答えはもう分かっています。

ですから、判断する前に体感の音量をそろえてください。そして、サビではなく静かなところを聴いてください。イントロ、フェードアウト、独奏の場面です。サビは圧縮されても生き延びます。消えていく余韻は生き延びません。

そのうえで、一日置いてください。第一印象は、明るくて大きいほうに味方します。長く付き合えるのは、たいてい三回目でもまだ平気なほうです。

最後に決め手になるもの

形容詞にできない仕事を、二つの識別子がします。規格番号がその発売を指し、マトリクスと内周の刻印——デッドワックスに刻まれた文字——が、その一枚が生まれた物理的な原盤を指します。内周の刻印が教えてくれることは、写真では見分けのつかない二つのプレスを分ける、唯一の方法であることも多いのです。

この二つが手元にあれば、Discogsのバージョン一覧が読めるようになり、自分の持っている盤と出品されている盤の違いも読めるようになります。なければ、形容詞を比べているだけです。

すでに持っているアルバムの二枚目を買う前に、それぞれについて四つ書き出してください。正確な版、入っている音楽、盤とジャケットの状態、そして送料込みの総額です。そのうえで、高いほうが自分に何を与えてくれるのか、そしてそれを実際に使うのかを問うてください。「当時のジャケットだから」は立派な答えです。大きな文字の「リマスター」は答えではなく、まだ立てていない問いです。

その記録は、盤そのものと一緒に Record by Record に残しておいてください。次に別の版が現れたとき、議論をやり直すのではなく、棚にある既知の一枚と比べることができます。

よくある質問

買う前に、その一枚がどのマスターなのかを調べる方法はありますか。

まず総収録時間を見てください。多くの出品には記載があり、アルバム全体で数秒ずれている盤は、ほぼ別の音源からの起こし直しです。次に、説明文ではなく、裏ジャケットと内周の刻印の写真を出品者に頼んでください。写真なら、数字が丸められたり文字が抜けたりしません。どちらも出してもらえない場合は、新しい盤だと考えるのではなく、版が不明な盤として扱ってください。

配信は、手元のCDと同じマスターですか。

違うことが多く、アプリの画面からは分かりません。各サービスは再生音量を目標値に合わせており、Spotifyはおよそ −14 LUFS、Amazon Musicは −13、Apple Musicは −16、YouTube Musicは −7 です。同じマスターでもサービスごとに聞こえる音量が変わります。それとは別に、レーベルが手元の盤より新しいマスターを配信にだけ納品していることもあり、その旨はどこにも書かれません。

リマスターの音が大きすぎるなら、音量を下げれば済む話ではないのですか。

そうはなりません。音量とダイナミクスは別のものだからです。圧縮されたマスターの音量を下げると、静かな部分も一緒に下がるだけで、大きい音と小さい音の差はマスタリングで決められたとおりの狭さのまま残ります。その段階で削られたものは、溝にもファイルにも残っておらず、つまみでは戻せません。

重量盤(180g)は普通のプレスより良い音がしますか。

盤の重さはマスタリングの工程ではないため、それだけで音が良くなることはありません。重い盤は平面性が保たれやすく反りに強いので、扱いや寿命の面では意味があります。丁寧な再発で採用されることが多く、丁寧さと同伴しますが、丁寧さの原因ではありません。判断はマスタリングのクレジットと盤の状態で行ってください。

国内盤と輸入盤では、どちらを選ぶべきですか。

音の良し悪しではなく、何が欲しいかで決まります。国内盤には帯と日本語の解説・訳詞が付き、資料として価値があります。輸入盤は同じ内容がより安いことが多く、マスターが同じなら音も同じです。両者でマスターが異なる場合もあるので、規格番号で版を確かめてから比べてください。帯の有無は状態表記にも関わります。

参考資料

  1. classic-info.net/high-quality-sound-cd/
  2. freefielder.jp/blog/2009/02/cd-2.html
  3. en.wikipedia.org/wiki/SPARS_code
  4. en.wikipedia.org/wiki/Loudness_war
  5. en.wikipedia.org/wiki/Half-speed_mastering
  6. en.wikipedia.org/wiki/Mobile_Fidelity_Sound_Lab
  7. abbeyroad.com/news/half-speed-remastering-the-classics-2090
  8. theabsolutesound.com/articles/mofi-president-jim-davis-on-the-companys-mastering-process/
  9. ultimateclassicrock.com/mofi-fraud-lawsuit-digital-mastering-analog-records/
  10. ecoustics.com/news/mofi-lawsuit-settled-2023/