コレクションガイド
中古レコードの状態表記… 盤質とジャケットの読み方
更新日 · 公開日
日本の店ごとに違う状態表記の読み方、海外のゴールドマイン基準との差、検盤と試聴で何を見るか。二文字では分からないことを確かめる手順を紹介します。

要点
- 状態表記の基準は店ごとに違います。二文字ではなく、その横の一文を読みます。
- 順番も統一されていません。ジャケットが先の店も、盤質が先の店もあります。
- 海外の表記では Good は「良い」ではなく、下から三番目の評価にあたります。
- 検盤では傷の有無より深さを見ます。音溝より浅い傷は、多くの場合ノイズになりません。
- 届いたら自分でも評価を書き留めます。二十枚で自分のものさしができます。
同じ盤の二枚が、どちらも VG+ と表記されていながら、別の盤のように聞こえることがあります。一枚は一分も経てば気にならなくなる軽いヒスノイズ。もう一枚は一回転ごとに鳴るプチという音が、片面の最後まで続きます。表記は同じ二文字です。
役に立つ情報は、たいてい二文字ではなく、その横に書かれた一文のほうにあります。そして、その一文が何もない出品は、そのこと自体が一つの情報です。
日本の表記は、ひとつではありません
まず知っておきたいのは、状態表記の基準が店ごとに違うということです。オーディオテクニカの記事も「コンディション表記やコンディションの基準は店舗によって異なります」とはっきり書いています。
違うのは記号だけではありません。二つの評価をどちらの順で書くかも、店によって逆になります。
ディスクユニオンは、中古プライス・カードの特記事項に「ジャケット⇒ディスクの順で」記号を並べると説明しています。一方タワーレコードの基準表は、MEDIA(盤質)の表が先、SLEEVE(ジャケット)の表が後という構成です。つまり同じ「VG+/VG」という並びでも、どちらの店の札かによって、傷んでいるのが盤なのかジャケットなのかが入れ替わります。
順番を覚えるのではなく、項目名を読む。これが日本で中古盤を買うときの、最初の実務です。
参考までに、ディスクユニオンが案内している記号は次のとおりです。
| 記号 | 内容 |
|---|---|
| (S) | 未開封品 |
| (A) | 美品 / 使用感が少ない |
| (B+) | 良品 / 細微なキズまたは汚れがある |
| (B) | 並品 / 使用感がある |
| (C) | 難あり品 |
同じ店が、補足として (NM) (EX) (VG) (G) の表記を併記することもあります。(NM) が美品、(EX) が良品から並品、(VG) が並品から難あり品、(G) がジャンク品にあたります。A・B・C とアルファベット表記が同じ札に混在しうる、と考えておくと混乱が減ります。
海外で買うときは、Good に注意します
海外の出品で使われているのは、アメリカの雑誌 Goldmine が定めた基準です。Discogs もこれを採用しています。ここで日本の感覚と最もずれるのが Good です。
英語の good は「良い」ですが、この基準では違います。Discogs は VG+ を Near Mint のおよそ 50%、VG を 25%、そして Good / Good Plus を 10〜15% と案内しています。 上から三番目ではなく、下から三番目に近い評価です。
| 表記 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| Mint (M) | 完全な状態。交渉で決まる | — |
| Near Mint (NM) | 開封直後のように見える | 基準価格 |
| Very Good Plus (VG+) | 軽い跡。聴取に支障なし | 約50% |
| Very Good (VG) | 使用感とノイズがあるが音楽は通る | 約25% |
| Good / Good Plus | 最後まで再生できるがノイズと摩耗がある | 約10〜15% |
| Poor / Fair | 割れ、反り、音飛び | 0〜5% |
つまり評価は、そのまま値段です。ゴールドマインの解説自体も「Good does not mean bad」と断ったうえで、最後まで音飛びせずに再生できる、より良い盤が見つかるまでのつなぎだと説明しています。日本の「並品」よりも下を指していると考えたほうが、実物を見たときの落差が小さくなります。
ちなみに EX という表記は、ゴールドマインでは VG+ と同じ段に置かれています。CDandLPの日本語ページのように、EX と VG++ と VG+ を別の段として細かく分ける基準もあります。段の数が違う表を、同じ物差しとして読まないことです。
検盤と試聴が、いちばん確かです
日本の実店舗には、海外の通販にはない利点があります。検盤と試聴です。オーディオテクニカはこれを「必要不可欠」と書き、「自分の目や耳でレコードの状態を確かめられるのは、実店舗ならではの利点です」としています。
検盤で見る順序も具体的に示されています。
まずセンターホールです。中央の穴の周りに擦り傷があれば、その盤は丁寧に扱われてこなかった可能性が高い、という見立てです。針を落とす前の扱いが、そのまま盤面の扱いを表します。
次が傷ですが、ここが肝心です。傷があるかどうかより、傷の深さを見ます。 音溝より浅い傷は、多くの場合ノイズの原因になりません。逆に、溝を横切る深い傷は一回転ごとに針が拾います。33⅓回転では約1.8秒ごとに一回、片面の最後まで続く計算です。写真で目立つ広い擦れが無音で、目立たない細い線が鳴り続けるのは、このためです。
試聴できるなら、静かな箇所を選んでください。CDandLPの基準も、NMやMは「音質に影響がある場合は」含まれないと定めており、VG+ については「性能の高いプレーヤーでは軽いノイズが聞こえる場合があります」と補足しています。同じ盤でも、再生する装置によって評価が変わりうるということです。
目で見たのか、聴いたのか
通販で買う場合、その盤を誰かが聴いたかどうかは分かりません。多くの中古盤は目視で評価されています。店が何十万枚と在庫を抱えていれば、全部を聴く時間はないからです。
ゴールドマインは、目視評価がどう外れるかについても率直です。同誌によれば、1950年代から1971年ごろまでの古いLPは見た目より良く鳴り、それ以降の新しい盤は見た目より悪く鳴る傾向があるとされています。傷や反りは目に見えますが、程度の悪いトーンアームによる音溝の摩耗は見えにくく、これが「きれいだと言われた盤」を損なう原因になります。
ゴールドマインのこの観察は1989年までの盤を対象にしたものです。それ以降の盤については、例外というより未検証と考えておくのが安全です。
ですから、質問は狭く具体的にします。「音はどうですか」では「良好です」としか返ってきません。片面を通して聴いたのか、一部を確認しただけなのか。規則的に繰り返すノイズはあるか。静かな箇所、曲の入りと終わりでどう聞こえるか。高価な盤や入手が難しい盤で答えが得られないなら、次の一枚を待つ理由になります。
帯と付属品は、別に数えます
日本盤では帯の有無が価格を左右します。オーディオテクニカの用語解説も、帯は「日本特有の文化」であり、現在では世界的にも「OBI」と表記され、収集する人が多いと説明しています。
注意したいのは、帯やライナー、インサートが状態表記に含まれるとはかぎらないことです。盤質とジャケットに記号が付いていても、帯の有無は別欄や特記事項に書かれることがあります。完品を求めるなら、記号ではなく品名と特記事項を読み、無ければ質問します。
内袋も同じです。オリジナルの印刷入り内袋と無地の白い袋は、役目は同じでも別のものです。何のために買うのかを先に決めておくと判断が早くなります。聴くための一枚と、棚に置くための一枚は、別の買い物です。
未開封は、答えではありません
未開封は、誰も開けていないという意味であり、誰も確認していないという意味でもあります。
反り、センターホールのずれ、プレス時の不良は、シュリンクが掛かる前の工程で起こります。シュリンクは後から掛け直すこともできます。ゴールドマインの価格ガイドを編んだティム・ニーリーは、未開封盤に割増を払う前の注意として、再シュリンクの可能性、中身が Near Mint とはかぎらないこと、求めているプレスとはかぎらないこと、そして中身が別の盤である可能性を挙げています。彼自身、ある MCA 所属アーティストの未開封盤を開けたら、同じ MCA の別のアーティストの盤が入っていたと書いています。
未開封という状態そのものに価値を見出すなら、それは十分な理由です。音の保証として買うものではありません。
自分のものさしを作ります
ターンテーブルから下ろしたとき、二つ書き留めてください。表記されていた評価と、自分ならつける評価です。 ノイズがどこにあったか、それが気になったか、同じ店でまた買うか。
二十枚も続けると、自分のものさしができます。どの店が辛口で、どの店が甘いか。密度の高いロックなら軽いパチパチは気にならないが、ピアノ独奏では一回のノイズも許せない、といったことも分かってきます。これは誰にも教えてもらえない、自分だけの基準です。
Record by Record は、そのメモを実際に持っている一枚と一緒に残します。見分けたプレスやランアウトから読み取ったことの隣に置いておけば、同じ盤が同じ値段で二枚並んだとき、他人の略号ではなく自分の耳を基準に選べます。
よくある質問
中古レコードは聴く前にクリーニングしたほうがよいですか。
判断する前にも、申し出る前にも、まず埃を落とすことをおすすめします。傷に聞こえる音の多くは、音溝に入った埃です。長く同じ内袋に入っていた盤ほど溜まっています。クリーニングしてから聴き、それから評価してください。返品を考えている場合は、先に写真を撮っておきます。クリーニングの後では、状態を変えたと見なされる余地が生まれるためです。
反りのある盤は再生できませんか。
必ずしもそうではありません。皿状のゆるやかな反りは、スタビライザーで問題なく追従することがあります。CDandLPの基準にも、反りによって軽いノイズや音飛びが出る場合があるため、気になるときは事前に出品者へ確認するようにと書かれています。判断の基準は、見た目が平らかどうかではなく、針が溝に留まるかどうかです。
自分が売るときは、どう評価を書けばよいですか。
強い光の下で、控えめに付けます。ゴールドマインは売り手に対し、希望的な評価で客を失うより、思ったより良い盤で驚かせるほうがよいと助言しています。評価に収まらない点は文章で挙げてください。書き込み、テープ、ジャケットの裂け。ある人には無関係でも、ある人には見送る理由になります。見本盤であればその旨も書き添えます。
CDも同じ基準で表記されますか。
同じ記号を使いますが、見るところが違います。タワーレコードの基準表でも、中古アナログと中古CDは別の欄に分かれており、CDでは擦れや傷の程度で段階が分かれています。CDには盤面ノイズという概念がなく、読めるか読めないかであり、加えてブックレットやインレイの状態が問われます。[中古CDの選び方](/ja/blog/buying-used-cds/)は別の記事で扱っています。
表記より悪い状態で届いたときは、どうすればよいですか。
繰り返し再生したりクリーニングしたりする前に、どの部分にどんな不具合があるかを具体的に伝えます。正当な申し出であれば、多くの場合、店や出品者は速やかに対応します。評価には主観が入るため、誠実な付け間違いと不注意は外からは同じに見えます。まずは前者だと考えて連絡するほうが、話は早く進みます。
参考資料
- diskunion-chiba.blog.jp/archives/16464949.html
- diskunion-shinjukulatinbrasil.blog.jp/archives/19066006.html
- faq.tower.jp/faq/show/15499
- cdandlp.jp/records-grading/
- audio-technica.co.jp/always-listening/articles/buy-used-record/
- support.discogs.com/hc/en-us/articles/360001566193-How-To-Grade-Items
- good-vinyl.de/app/download/8939810475/GOLDMINE+-+Grading+Records.pdf