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CDの収納:盤とブックレットと帯を、長く手元に置くために
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CDは立てて、ケースに入れて収納します。音楽はレーベル面のすぐ下にあり、ブックレットと帯は盤より湿気と光に弱い紙です。CDの寿命と劣化について分かっていること、手元の一枚を確かめる方法もまとめました。

要点
- CDは立てて、元のケースに入れ、直射日光と高温多湿を避けて収納します。
- 日本の家では湿気に気をつけ、押入れに入れるなら梅雨と夏は除湿します。
- 音楽はレーベル面のすぐ下にあるので、守るべきは印刷された面です。
- 多くのCDは長く持ちますが早く劣化する盤もあり、手元の一枚の寿命は分かりません。
- ブックレットと帯は紙なので、盤より先に光と湿気の影響を受けます。
棚からCDを一枚抜き、裏返して、光る面に傷がないか照明にかざす。よく見かける確かめ方ですが、それでは半分しか見ていません。CDは、テーブルに伏せて置いてしまいがちな光る面のほうが丈夫で、ジャケットの絵柄が印刷された面のすぐ下に、音楽が記録されています。
もうひとつ、よく聞かれる心配があります。CDはいつまで聴けるのか、という問いです。豊中市立図書館がレファレンス協同データベースに残した記録によれば、1990年3月17日の新聞夕刊が、音楽評論家の石井宏さんが前年に雑誌で「CDは腐る」と書き、音楽業界で話題になったと伝えています。それから三十年以上がたったいまも、正直な答えは「分かっていることと、分かっていないことがある」です。
この記事では、CDの収納の基本から始めて、日本の家で気をつけたい湿気、寿命と劣化について分かっていること、手元の一枚の確かめ方、そして紙の部分であるブックレットと帯の扱いまでをまとめます。
CDの収納は、立てて、ケースに入れて
日本で売られているCDには、たいてい「取り扱い上のご注意」が印刷されています。エイベックスがCD用として公開している文面は、保管について三つのことを求めています。日の当たる場所や、暑く湿った場所に置かないこと。使用後は元のケースに入れて保管すること。そして、ケースの上に重い物を置いたり落としたりしないことです。短い文ですが、収納の要点はほぼここに入っています。
向きは縦です。米国国立標準技術研究所(NIST)が図書館員とアーキビストのために書いたCDとDVDの取り扱いガイドは、ディスクは本のように立てて、専用のケースに入れて保管し、何年も平積みにしないよう書いています。カナダ保存研究所(CCI)も、記録媒体はすべて縦向きに保管するよう勧めています。
一列には少し余裕を残します。一枚を抜くとき、両隣まで引きずられてこないくらいが目安です。ボックスセットや大型の版は専用の段にまとめておくと、アルバムの列の中を探し回らずに済みます。アーティスト順や五十音順、LPとの分け方といった並べ方そのものは、レコードとCDの整理で扱っています。ここでは、並べたCDを傷めないための話をします。
いちばん効く習慣は、いちばん地味なものです。聴き終えたら、盤をすぐ元のケースに戻すことです。
日本の家で気をつけたいのは、湿気です
日本の夏は、紙にも盤にも厳しい季節です。国立国会図書館は書庫の温湿度管理について、日本の夏の蒸し暑さは資料にとって理想の低温・低湿とは正反対で、一年でいちばん注意が要る季節だとしています。東京本館では、梅雨の時期、書庫内の湿度が60%を超えるころから空調機を動かし始めます。
目安になる数字もあります。同じページによれば、湿度がいつも65%を超える状態になると、カビが生えやすくなるとされています。 国会図書館はこれを一つの目安として、温湿度を急激に変動させないことも目指しています。書架の最下段と床の間はできるかぎり空け、床からの温度や湿度の変化を直接受けないようにしているそうです。
盤のほうは、もう少し条件が厳しくなります。国会図書館の調査報告は、書庫は紙の資料に都合のよい温度と湿度に保たれているが、電子媒体にはそれよりさらに低温・低湿が望ましい、と注記しています。記録型の光ディスクで文書を長く残すための日本の規格、JIS Z 6017:2013は、長期保存の環境を温度10〜25℃、湿度40〜60%とし、外光を受けず、結露しない場所を求めています。市販の音楽CDのための規格ではありませんが、目安としては使えます。CCIはさらに、温度と湿度の大きく急な変化を避けるよう求めています。層がはがれる原因になりうるからです。
家に置き換えると、答えは「自分が暮らしている部屋」です。屋根裏や物置のように季節で暑さ寒さが大きく振れる場所、日の当たる窓際は避けます。押入れやクローゼットに入れるなら、床から少し浮かせ、小さな湿度計を一つ置いておくと、梅雨と夏にいつ除湿すればよいかが分かります。
守るべきは、印刷された面です
CDは、ほとんどが透明なポリカーボネートという樹脂でできています。音楽はそこに細かな凹凸のらせんとして刻まれ、その上を薄い金属の反射層が覆い、ごく薄いラッカーで封じられ、いちばん上にレーベルが印刷されています。つまりデータは、上の面のすぐ下にあります。レーザーは下から、樹脂の厚みを通して読み取ります。
そのため、NISTのガイドによれば、再生面の軽い傷はたいてい問題になりません。レーザーの焦点が傷より奥にあるからで、眼鏡の傷越しにものを見るのに似ています。残りの多くはプレーヤーの誤り訂正が補います。印刷面は事情が違います。引っかき傷やペン、鉛筆、極細のマーカーで金属層に小さな穴が開くと、その下のデータは失われ、元には戻りません。
日本のCDの注意書きも同じことを言っています。ディスクは両面とも、鉛筆、ボールペン、油性ペンなどで文字や絵を書いたり、シールなどを貼ったりしないこと。NISTとCCIも貼るラベルを勧めていません。はがすときに、金属層ごと持っていかれることがあるからです。盤は縁と中央の穴を持ち、テーブルではなくケースに戻します。
再生面も無敵ではありません。NISTは、指紋や汚れは広い範囲にかかるため、傷より多くの読み取りエラーを起こすことがあると書いています。傷の向きも大事です。音楽はらせん状のトラックに沿って読まれるので、トラックに沿って円周方向に走る傷は、ひと続きのデータを長く削り、訂正しきれないエラーになりやすいのです。中心から外へ放射状に走る傷なら、トラックの多くの箇所に短くかかるだけで済みます。
ですから拭き方は、円を描かずに中心から外へまっすぐです。エイベックスの注意書きも、汚れはメガネふきのような柔らかい布で、内側から外側へまっすぐ軽く拭くよう求めています。中古の盤を選ぶときの見方は、中古CDを買う前に確認することにまとめています。
CDの寿命と劣化:分かっていること、分かっていないこと
劣化の仕組みは分かっています。国立国会図書館のカレントアウェアネスに2009年に載った解説は、光ディスクの劣化の原因としてまず高温多湿な環境を挙げ、水分が反射膜や記録層まで入り込むとそこが腐食し、データを読めなくなる場合があると説明しています。NISTも、アルミニウムの反射層が酸化して反射率を失い、レーザーで読めなくなる現象を「ディスクロット」と呼び、これがプレス盤が環境から受ける劣化の主な原因だとしています。酸素や水分は、印刷面の傷やはがれかけたラベルから、より入り込みやすくなります。
厄介なのは、劣化が耳に聞こえるまでに時間がかかることです。同じ解説によれば、光ディスクは一部を正しく読み出せなくても、誤り訂正用のデータで修復できます。ただしその能力には限界があり、誤りの割合が一定の値を超えると訂正できなくなります。そこが光ディスクの「寿命」です。完璧に鳴っている盤が、裏では少しずつ傷んでいることもありえます。
では、実際にどのくらい持つのでしょうか。日本の手がかりとして、国会図書館自身の調査があります。平成15年12月から翌年1月にかけての調査で、昭和57年度から平成3年度(1982年4月〜1992年3月)に受け入れた音楽CDを毎年5点ずつ無作為に選び、再生を確かめました。各盤の最初と最後のトラックの冒頭と、途中の1曲を再生する確認で、50点すべてが再生できました。 ただし報告書は、音楽CDは多少のエラーがあっても誤り訂正で問題なく再生される規格であり、この確認は「あくまで参考程度のもの」だと断っています。
もっと踏み込んだ試験をしたのは米国議会図書館です。ほとんどが1992年から1999年に作られた音楽CDを熱と湿気で人工的に老化させ、室内の条件に当てはめて推定しました。約70%は寿命が100年を超え、約4%は10年以内に寿命を迎えると推定されました。 議会図書館は、こうした結果こそ、光ディスクの寿命を大まかに一般化するのがなぜこれほど難しいかを示している、とまとめています。
推定の幅も大きく開いています。NISTは2003年に、音楽用を含む読み出し専用のディスクについては情報が少なく、見込みは20年から100年まで分かれていると書きました。国会図書館の報告書には、電子媒体一般の寿命を20〜30年程度とする記述もありますが、プレスされた音楽CDについての数値ではありません。
ですから、話はどちらの方向にも単純ではありません。CDは決まった年数で腐るわけでも、いつまでも持つと約束されているわけでもありません。多くのプレス盤は安定していて、少数が早く傷みます。議会図書館の棚での観察では、最初からエラーの多かった盤ほど、その後もエラーが速く増え、扱いによる傷で急に増えた盤もありました。置き場所も効きます。議会図書館の推定では、10℃・相対湿度35%で保管した盤は、25℃・50%の場合よりおよそ11倍長く持つ可能性があります。冷蔵室は要りません。暑くて湿った部屋から遠ざければ十分です。
劣化していないか、一枚を確かめる
確かめるのに、時間はかかりません。まず盤を強い照明にかざし、透かして見ます。針で突いたような光の点が見えたら、そこでは金属層が失われています。次に印刷面と縁を見て、コーヒーのしみのような変色やはがれがないかを確かめます。
それから、最後まで通して再生します。誤り訂正が初期の劣化を隠すので、途中までは完璧に聞こえることがあるからです。音が飛んだら、CCIの助言どおり、盤のせいにする前に別のプレーヤーやドライブで試します。大切で買い直しの難しい一枚なら、読めるうちに写しておきます。
ブックレットと帯は、紙です
ブックレットには演奏者やスタッフのクレジットが載っていて、どの版を持っているかを示す、ほとんど唯一の印刷物であることもあります。国内盤なら、そこに帯が加わります。
光は、盤よりも紙の問題です。NISTは、ふつうの室内照明が読み出し専用のディスクに与える影響はごく小さく、寿命の計算に入れないほどだと考えられていると書いています。一方、CCIの紙資料の指針によれば、光に非常に弱いインクや染料は、紫外線を含む50ルクスの薄暗い照明に年3,000時間さらされる条件でも、1年から10年で目に見えて退色することがあります。日の差す窓の向かいの棚では、毎日読む背と帯の色が抜けていき、奥の盤は何ともない、ということが起こります。
湿気はもっと急です。CCIによれば、湿度90%ならカビは2日で生えうるとされ、80%でも10日ほどです。湿気は紙を波打たせ、インクをにじませます。盤と比べると差がはっきりします。NISTの試験では、きれいな水に24時間沈めたCDは直後には読めなかったものの、室内で24時間乾かすと普通に再生できました。これはきれいな水での結果で、ほかの液体は盤の中に汚れを残すことがあるとNISTは注意しています。それでも、ブックレットなら波打ってインクがにじむほど水に浸かっても、盤は元に戻りました。
紙と盤が、同じケースの中で影響し合った例もあります。1988年から1993年にかけて、英国ブラックバーンのPDOの工場でプレスされたCDの一部で、レーベル面の外周寄りに銅色の変色が現れ、再生できなくなるおそれが出ました。レーベルの一つHyperionの告知は、1997年に国際音声・視聴覚アーカイブ協会の会報に転載され、工場が、ブックレットや挿入紙の紙に含まれる硫黄に耐えられないラッカーを使っていたと認めたことを伝えています。一つの工場の欠陥であり、すべてのCDに当てはまる話ではありません。ただ、ケースの中の紙が中立ではないことは覚えておいてよいでしょう。
帯について。CDの帯は、ケースの厚みに合わせて平行な二本の折り目を付けた、やや硬めの紙で、ケースの背の側にかぶせてあります。ウィキペディアによれば、帯が失われると、正式なタイトルや規格品番、価格を確かめられないこともあります。 棚ではちょうど外を向く位置にあるので、日の当たる棚では最初に色が抜ける部分でもあります。帯はケースにかぶせたままにし、ケースを取り替えるときは忘れずに移します。
ブックレットの出し入れも、少し気を配ります。ジュエルケースのふたにある小さな爪は、冊子を破るほど強くつかむことがあります。背をつまんで引き抜かず、そっと外し、厚すぎる冊子を合わないケースに押し込まないようにします。セロハンテープ、クリップ、輪ゴムは紙を傷めるものとしてCCIが挙げているので、紙の近くには置きません。
ケースは交換できる部品です
標準的なジュエルケースは、ポリスチレンでできた三つの部品の箱です。ちょうつがいの腕は衝撃でよく折れ、盤を留めるトレイの爪も欠けます。それが悪い知らせで、良い知らせは、規格品なので割れたケースは簡単に取り替えられることです。
取り替えるときは、ブックレットと裏のインレイ、そして帯を新しいケースに移します。規格品でないものは残します。色付きや印刷入りのトレイ、スリップケース、デジパックや紙ジャケットは版の一部で、引き出しの予備とは替えられません。何かを分ける前に、紙に書かれていることを控えておきます。規格品番、クレジット、古い盤ならSPARSコード。どの版を持っているかの証拠です。SPARSコードの読み方はオリジナル盤・再発盤・リマスターの違いで説明しています。ケースや盤の状態を書き留めるなら、中古レコードの状態表記の言葉を借りると、あとで比べやすくなります。
場所を空けるためにソフトケースへ移すのは、得るものと失うものがある選択です。CCIは、プラスチックや紙のスリーブは物理的な保護にならず、盤を傷つけたり汚したりしうるとして、博物館や資料館の保管には使わないよう求めています。PVC(塩化ビニル)のスリーブについては、劣化とともに可塑剤が移り、盤を汚したり傷めたりすると注意しています。それでも移すなら、PVCではなくポリプロピレンを選び、ブックレットと帯を同じ盤と一緒に保管し、まず一段分のふつうのアルバムで試してから、コレクション全体に広げます。
Record by Record では一枚ごとにメモを残せるので、ボックスセットや大きな版を置いた棚を書き留めておけば、棚と目録が食い違わずに済みます。
よくある質問
自分で焼いたCD-Rも、市販のCDと同じくらい持ちますか。
同じとは考えないでください。CD-Rは刻まれた凹凸ではなく、有機色素の層に記録します。カレントアウェアネスの解説は、色素を使うディスクは一定以上の光を浴びると色素が分解し、データが失われることがあると書いています。NISTも、色素は熱と湿気、長い日光で早く傷むとしています。替えのきかない録音なら、読めるうちに写してください。
1980年代に買ったCDは、特に劣化しやすいのですか。
NISTによれば、初期のディスクでは縁の保護されていない部分から水分が金属層まで入り込むことがあり、のちに縁もラッカーで封じられるようになりました。ただ、最初期のプレスだけの寿命を示した研究は見当たりません。古いから駄目とは限らないので、光にかざし、通して聴いて確かめてください。
ブックレットはケースから出して、別に保管したほうがよいですか。
ふつうの部屋なら、その必要はありません。NISTのガイドは、長期保存では紙をケースの外に出すのが賢明な場合もあると述べつつ、特定の試験に基づくものではないと断っています。分ければ、一緒にしておくべき物が二つに増えます。分けるなら、ブックレットを清潔な袋に入れ、その盤のすぐ隣に置いてください。
汚れが落ちないとき、アルコールで拭いてもよいですか。
まず、日本のCDの注意書きに従うのが無難です。エイベックスのCD用の注意書きは、レコード用クリーナーや溶剤を使わないよう求めています。NISTはしつこい汚れにイソプロピルアルコールを再生面にだけ控えめに使うことを認めつつ、アセトンなどの溶剤は盤そのものを溶かすと警告しています。たいていは乾いた柔らかい布で足ります。
ブロンズ化したCDは、直せますか。
拭いても戻りません。腐食は盤の内部の金属層で起きていて、ブロンズ化の資料はこれを進行するものとして扱っています。できるのは、読めるうちにデータを写し、別の工場でプレスされた盤を探すことです。どこでプレスされたかは、たいてい中央の穴のまわりの刻印で分かります。ブックレットと帯は残してください。
参考資料
- avex.com/jp/ja/contact/product/
- extreme-lab.com/cdjacket-kiteibun/
- ndl.go.jp/jp/preservation/collectioncare/humiditycontrol.html
- current.ndl.go.jp/report/no6
- current.ndl.go.jp/wp-content/uploads/mig/report/no6/lis_rr_06.pdf
- current.ndl.go.jp/ca1683
- crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000219640&page=ref_view
- jiima.or.jp/certification/arcive_opticaldisk/disk_hndling/
- ja.wikipedia.org/wiki/帯_(出版)
- nvlpubs.nist.gov/nistpubs/Legacy/SP/nistspecialpublication500-252.pdf
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- en.wikipedia.org/wiki/Disc_rot
- en.wikipedia.org/wiki/Compact_disc_bronzing
- iasa-online.de/files/Bronzed CD alert 1997.pdf
- en.wikipedia.org/wiki/Optical_disc_packaging